「50代・モノづくりリーダー向けキャリアプラン支援策として」
(導入の経緯)
当社では数年前に人事制度を見直し、製造現場のリーダー層の役職を、管理職と専門職とに分けることになりました。とくにシニアリーダーは、現場を離れて管理業務に専念するため、役職定年後のことが危惧されました。これまで培った技能を活かせるのか、モラールダウンを防ぐことができるのか、こうしたことを議論しました。というのも、当社は55歳を役職定年としており、その後、スタッフ部門へ進むか作業者として現場に復帰するかを選択するようになっているからです。スタッフ部門の受け皿は限られているため、製造現場に復帰せざるをえない管理職が相当数見込まれたのです。
実際に現場の生の声を集めてみると、「昨日まで自分の部下だった者の下で働くのはどうも・・・」、「なんでまた現場に・・・」など、ネガティブに受けとめる方も多くいました。
そこで、50歳・53歳・55歳の節目ごとに人事部門と製造部門がタイアップして、節目研修や進路に関する話し合いの制度を核としたキャリアプラン支援策を導入することになりました。
ここで着目したのがAIAでした。以前より係長研修の一部に導入しており、評判がすこぶるよく社内での拡充の声もあったため、管理職への全面展開を決めました。まずは50歳の節目を迎えた方に対して、キャリアを深く考え、今後の会社人生や定年後の人生を考察する機会として、AIAをベースとしたキャリアプラン研修を実施します。その後、53歳で技能の棚卸や活躍したい分野の検討、工場長との話し合い等による進路の方向付けや技能の再開発支援等を行い、55歳の配属に向けて段階的にキャリアを構築していきます。
このように、「管理職が、役職定年後も高い技能や長年の経験を活かして、いつまでもいきいきと働くことのできる環境づくりを推進する」ことを目的に、進路支援施策を実施しました。
(効果)
施策導入から5年経過後は、社内で定着し、研修の評価も上々です。
以下に、参加者の声のいくつかを記載します。上記のプロセスを経過することなく役職定年を迎えたとしたら、ネガティブな気持ちのままの管理職が増えていたかもしれません。
・反省するところ大であった。具体的に将来を考え方向づけができた。「自分から動く」ことの重要性を改めて感じた。
・今後の人生プランを真剣に考えたことがなく、何とかなるだろうとの意識が強かったが、180度転換した想いだ。何事も積極的に取組むことの重要性を理解した。
・人生まだまだ先が長い。自分自身を見つめ直し、さらに生涯現役であり続けるために、自信をもって事にあたり、忍耐と積極性をもって取り組んでいきたい」
ちなみに、この結果はAIA自体の良さはもちろんですが、コーディネーター(AIAの進行役)の人選も鍵でした。工場で人望の厚い工場長をコーディネーターに配することで、モノづくり・人づくりの心が伝わったのではないかと思っています。
(今後について)
現場のリーダー達が定年後どう生きるかを考える機会として、AIAはすばらしく的を射たプログラムだと考えます。また、今後は管理職だけではなく、もっと若い層への意欲啓発にも活用したらどうかという声もあがっています。
事実、私自身も50歳の管理職とともに30代でAIAに参加しましたが、人生の諸先輩の考え方や経験に触れて、自分の人生について深く考えることができたことは有意義であり、大変貴重な機会でした。